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【平面図形:入試問題】発想が豊かになる良問 直角三角形、角の二等分線、面積比

中学数学

 ここでは、一つの問題でたくさんのことが復習できるいい問題を持ってきました。直角三角形の特徴、角の二等分線の特徴、面積の特徴、これらが詰まっています。

問題1. 22年 西大和学園

色のついた三角形の面積比を求めよ。

問題を見て思うこと

 まずは直角三角形ですね。ABC が直角三角形なのと、CEF も直角三角形なのはパッと見て目に入ります。直角三角形なので、三平方の定理や相似などが引き出しに現れてきます。→解:三平方の定理から AB を求める

次に目に入る、というか少し注意しないと見えませんが、C です。線分 CFC を二等分しています。→解:角の二等分線と線分の比から AD, DB を求める

最後に、ここがこの問題のミソになってくると思いますが、角を二等分していることで、当然ながら ECF=ACD です。これは何を意味するか。一つ目の直角三角形と合わせると、CEFCAD ということです。→解:相似比より EF の長さ、CFFD の比を求める

イメージ

三平方の定理から AB を求める

A=90 より ABC に三平方の定理を適用して、

AB=3 解説1

直角頂点から下した垂線の足でできる3線分の長さを求める

直角三角形の三辺が分かったので、AE, BE, EC はそれぞれ

AE=125BE=95EC=165

と求められる。 解説2

角の二等分線と線分の比から AD, DB を求める

線分 CDC を二等分するので、

AD:DB=CA:CB=4:5

AB=3 とから、

AD=3×49=43DB=3×59=53

相似比より EF の長さ、CFFD の比を求める

CEFCAD より、

EF:43=165:4

となる。\rightarrow 解説3

また、斜辺部分についても同様に比例式を立てると、

\begin{eqnarray} \mathrm{CF}:\mathrm{CD} &=& \frac{16}{5}:4\\ &=& 4:5\\ \therefore\;\mathrm{CF}:\mathrm{FD} &=& 4:1 \end{eqnarray}

面積比を求める

それぞれ色のついた面積を全体の面積の比率で表す。

\begin{eqnarray} \triangle\mathrm{ADF} &=& \triangle\mathrm{ABC}\times\frac{4}{9}\times\frac{1}{5}\\ &=& \triangle\mathrm{ABC}\times\frac{4}{9}\cdot\frac{1}{5}\\ \triangle\mathrm{CFE} &=& \triangle\mathrm{ABC}\times\frac{16}{25}\times\frac{\cancel{16}\,4}{\cancel{36}\,9}\\ &=& \triangle\mathrm{ABC}\times\frac{4}{9}\cdot\frac{16}{25}\\ \therefore\;\frac{\triangle\mathrm{ADF}}{\triangle\mathrm{CFE}} &=& \frac{\displaystyle\frac{1}{5}}{\displaystyle\frac{16}{25}}\\ &=& \frac{5}{16} \end{eqnarray}

解説1. 覚えておくべき特別な直角三角形

この4つは覚えて、立式なしで記載できるようにしましょう。

解説2. 直角頂点から下した垂線の足でできる3線分の長さ

試験のときにはそれなりに計算式を書かないといけないですが、ここでは見通しをよくするためにあえて計算式を省略しました。求め方は↓の記事にあります。

解説3. 比例式を立ててもよいが、楽に求めよう

比例式を立てて丁寧に解くと次のようです。

\begin{eqnarray} \mathrm{EF}:\frac{4}{3} &=& \frac{16}{5}:4\\ 4\cdot\mathrm{EF} &=& \frac{4}{3}\cdot\frac{16}{5}\\ \mathrm{EF} &=& \frac{\cancel{4}}{3}\cdot\frac{16}{5}\cdot\frac{1}{\cancel{4}}\\ &=& \frac{16}{15} \end{eqnarray}

もう少し楽に求めるには次のように考えます。すなわち、

  • \mathrm{CA} に対して辺 \mathrm{AD}\displaystyle\frac{1}{3}
  • この比率は辺 \mathrm{CE} と辺 \mathrm{EF} でも同じ(\because 相似)
  • ゆえに、\mathrm{EF} = \displaystyle\frac{16}{5}\cdot\frac{1}{3} = \displaystyle\frac{16}{15}

なるべく楽に計算する工夫を普段から練習していくことが重要です。

解説4. 角の二等分線の基本は線分比。他の発想もついでに鍛えよう。

 角の二等分線を見たときにまず考えたい発想は線分比です。この問題もそれを用いて求めました。しかしさらに高度な問題になると、二等辺三角形に絡めた問題もよく出ます。↓の記事にそれを載せています。

問題2. 19年 西大和学園_解1:図形問題らしい解き方

?の長さを求めよ。

問題を見て思うこと

 パッと見て分かるのは、\angle\mathrm{B} が二等分されていること、\angle\mathrm{C}, \angle\mathrm{D} が直角であることです。

\angle\mathrm{B} が二等分されていることから、辺の長さの比 \mathrm{BA}:\mathrm{BC} はすぐに分かります。→解:角の二等分線から線分の比

そして、\angle\mathrm{B} 共通、\angle\mathrm{C}=\angle\mathrm{D} から\triangle\mathrm{BDC}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCA} であることが分かります。→解:\triangle\mathrm{BDC}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCA}

また、角の二等分の条件 (\angle\mathrm{DBF}=\angle\mathrm{CBE}) と直角の条件 (\angle\mathrm{BDF}=\angle\mathrm{BCE}) から \triangle\mathrm{BDF}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCE} であることを見抜きます。→解:\triangle\mathrm{BDF}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCE}

イメージ

角の二等分線から線分の比

線分 \mathrm{BE}\angle\mathrm{B} の角の二等分線なので、

\begin{eqnarray} \mathrm{BA}:\mathrm{BC} &=& \mathrm{AE}:\mathrm{EC}\\ &=& 3:2 \end{eqnarray}

\angle\mathrm{B} 共通、\angle\mathrm{C}=\angle\mathrm{D} から \triangle\mathrm{BDC}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCA}

\triangle\mathrm{BDC}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCA} より、

\begin{eqnarray} \mathrm{BD}:\mathrm{BC} &=& \mathrm{BC}:\mathrm{BA}\\ \mathrm{BD}\cdot\mathrm{BA} &=& \mathrm{BC}^2\quad\rightarrow\text{解説1}\tag{☆}\label{p3810eq1}\\ \therefore\;\mathrm{BD} &=& \frac{\mathrm{BC}^2}{\mathrm{BA}}\tag{★}\label{p3810eq2} \end{eqnarray}

\rightarrow 解説1

\eqref{p3810eq2}\mathrm{BD} の長さが \mathrm{BA}, \mathrm{BC} のような長さの比で表現して、( ) 付きの \displaystyle\frac{2^2}{3}=\displaystyle\frac{4}{3} であることを表している。すなわち下図のようである。

角の二等分の条件(\angle\mathrm{DBF}=\angle\mathrm{CBE})と直角の条件(\angle\mathrm{BDF}=\angle\mathrm{BCE})から \triangle\mathrm{BDF}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCE}

また、\triangle\mathrm{BDF}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{BCE} より、

\begin{eqnarray} \mathrm{DF}:2 &=& \frac{4}{3}:2\\ 2\cdot\mathrm{DF} &=& 2\times \frac{4}{3}\\ \therefore\;\mathrm{DF} &=& \frac{4}{3} \end{eqnarray}

解説. 方べきの定理とみてもよい

\eqref{p3810eq1}

\mathrm{BD}\cdot\mathrm{BA} = \mathrm{BC}^2

は方べきの定理とみてもよいです。\triangle\mathrm{ADC} が直角三角形なので、図のように円が書けるからです。

ただし、この時の \mathrm{BD} は絶対値としての長さではなく、相対値としての長さです。なぜなら、\mathrm{BA}, \mathrm{BC} が絶対値としての長さではなく相対値としての長さだからです。解で「( ) 付きの \displaystyle\frac{4}{3}」と表現しているのはそのためです。

下記記事↓「解2(上級). スマートな解法_方べきの定理」も参考に。

解2:強引な解き方

 上記の問題を強引に解きます。強引な解き方は武器として持っていると強いです。図形的発想が思いつかない場合でも解ける場合があるからです。

\mathrm{BA}:\mathrm{BC}=3:2 が分かれば、この図形は座標辺面上に表すことができます。

まず、\mathrm{BA}:\mathrm{BC}=3:2 から x>0 として

\begin{eqnarray} \mathrm{BA} = 3x\\ \mathrm{BC} = 2x \end{eqnarray}

と表すことができ、三平方の定理から x が求まるため、頂点の座標が分かります。その後は、直線 \mathrm{BE}, \mathrm{CD} の式から点 \mathrm{D}, \mathrm{F} の座標が求まります。

文字 x を導入るすことで長さを強引に表現する

\mathrm{BA}:\mathrm{BC}=3:2 から x>0 として

\begin{eqnarray} \mathrm{BA} = 3x\\ \mathrm{BC} = 2x \end{eqnarray}

と置くと、\triangle\mathrm{ABC} に三平方の定理を適用して、

\begin{eqnarray} (3x)^2 &=& (2x)^2 + 5^2\\ 5x^2 &=& 25\\ \therefore\; x &=& \sqrt{5}\quad (x>0) \end{eqnarray}

ゆえに、下図のようになる。

直線 \mathrm{AB} を求める

直線 \mathrm{AB} の傾きは、

\frac{5}{2\sqrt{5}}\left(=\frac{\cancel{5}}{2\cancel{\sqrt{5}}}\frac{\sqrt{5}}{\cancel{\sqrt{5}}}=\frac{\sqrt{5}}{2}\right)

なので、直線 \mathrm{AB} の方程式は、

y=\frac{\sqrt{5}}{2}x+5

直線 \mathrm{CD} を求める

直線 \mathrm{CD} は 直線 \mathrm{AB} に垂直なので、直線 \mathrm{CD} の傾きは

-\frac{2\sqrt{5}}{5}

である(\rightarrow 解説2)。

ゆえに、直線 \mathrm{CD} の方程式は、

y=-\frac{2\sqrt{5}}{5}x

交点 \mathrm{D} を求める

交点 \mathrm{D} は直線 \mathrm{AB} と 直線 \mathrm{CE} の交点なので、

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y &=& \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{2}x+5\\ y &=& -\displaystyle\frac{2\sqrt{5}}{5}x \end{array} \right. \end{eqnarray}

y を消去すると、

\begin{eqnarray} -\displaystyle\frac{2\sqrt{5}}{5}x &=& \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{2}x+5\\ -\frac{5\sqrt{5}}{10}x-\frac{4\sqrt{5}}{10}x &=& 5\\ -\frac{9\sqrt{5}}{10}x &=& 5\\ x &=& -\frac{5\times 10}{9\sqrt{5}}\\ &=& -\frac{\cancel{5}\times 10}{9\cancel{\sqrt{5}}}\frac{\sqrt{5}}{\cancel{\sqrt{5}}}\\ &=& -\frac{10\sqrt{5}}{9}\\ \therefore\; y &=& -\displaystyle\frac{2\cancel{\sqrt{5}}}{\cancel{5}}\left(-\frac{10\cancel{\sqrt{5}}}{9}\right)\\ &=& \frac{20}{9} \end{eqnarray}

直線 \mathrm{BE} を求める

直線 \mathrm{BE} の傾きは、

\frac{2}{2\sqrt{5}}\left(=\frac{1}{\sqrt{5}}=\frac{\sqrt{5}}{5}\right)

なので、直線 \mathrm{BE} の方程式は、

y=\frac{\sqrt{5}}{5}x+2

交点 \mathrm{F} を求める

交点 \mathrm{F} は直線 \mathrm{CD} と 直線 \mathrm{BE} の交点なので、

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y &=& -\displaystyle\frac{2\sqrt{5}}{5}x\\ y &=& \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{5}x+2 \end{array} \right. \end{eqnarray}

y を消去すると、

\begin{eqnarray} -\displaystyle\frac{2\sqrt{5}}{5}x &=& \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{5}x+2\\ -\frac{2\sqrt{5}}{10}x-\frac{4\sqrt{5}}{10}x &=& 2\\ -\frac{6\sqrt{5}}{10}x &=& 2\\ x &=& -\frac{2\times 10}{6\sqrt{5}}\\ &=& -\frac{\cancel{5}\times 4}{6\cancel{\sqrt{5}}}\frac{\sqrt{5}}{\cancel{\sqrt{5}}}\\ &=& -\frac{4\sqrt{5}}{6}\\ &=& -\frac{2\sqrt{5}}{3}\\ \therefore\; y &=& -\displaystyle\frac{2\cancel{\sqrt{5}}}{\cancel{5}}\left(-\frac{2\cancel{\sqrt{5}}}{3}\right)\\ &=& \frac{4}{3} \end{eqnarray}

\mathrm{DF} の距離を求める

\mathrm{D},点 \mathrm{F} の座標が求まったので、その距離は三平方の定理から

\begin{eqnarray} \mathrm{DF}^2 &=& \left(-\frac{2\sqrt{5}}{3}+\frac{10\sqrt{5}}{9}\right)^2+\left(\frac{20}{9}-\frac{4}{3}\right)^2\\ &=& \left(\frac{4\sqrt{5}}{9}\right)^2+\left(\frac{4\times 2}{9}\right)^2\\ &=& \left(\frac{4}{9}\right)^2\left((\sqrt{5})^2+2^2\right)\\ &=& \left(\frac{4}{9}\right)^2\times 9\\ &=& \left(\frac{4}{3}\right)^2\quad\rightarrow\text{解説3} \end{eqnarray}

\rightarrow 解説3

よって、\mathrm{DF}>0 より、

\mathrm{DF}=\frac{4}{3}

解説1. 強引に解けると強い

 図形的な発想が思いつかなくても解けるため、計算さえできれば解けます。しかし一方で計算ミスのリスクと時間切れのリスクがあります。

なので、試験の際には図形的な発想が思いつかない場合に、一旦その問題は飛ばし、一通り解き終わった後、さらに時間がある際にさらなる一手として使えるとよいと思います。

その一手は練習次第で手に入るものなので、計算練習は常に真剣に行うとよいです。その際、解説3で述べているように計算の工夫を合わせて練習するとよりよいです。

解説2. 垂直に交わる直線の傾き

 傾きが

a

の直線に垂直に交わる直線の傾きは、

-\frac{1}{a}

です。こちらの記事↓で詳しく述べているので見てください。これ自体は高校生向けに書いた記事なので、この中の「傾きの積を利用」だけ見ればよいです。

解説3. 計算の工夫について

\mathrm{DF}^2 を計算する際、

\begin{eqnarray} \mathrm{DF}^2 &=& \left(-\frac{2\sqrt{5}}{3}+\frac{10\sqrt{5}}{9}\right)^2+\left(\frac{20}{9}-\frac{4}{3}\right)^2\\ &=& \left(\frac{4\sqrt{5}}{9}\right)^2+\left(\frac{4\times 2}{9}\right)^2 \end{eqnarray}

まで計算した後、\left(\frac{4\sqrt{5}}{9}\right)^2\left(\frac{4\times 2}{9}\right)^2 をまともに計算してしまうのは避けたいです。数字が大きくなりすぎて計算ミスのもとですので。

ここでは因数分解をうまく使って計算を楽にしています。使っている因数分解は、

\begin{eqnarray} (ab)^2+(ac)^2 &=& a^2b^2+a^2c^2\\ &=& a^2(b^2+c^2) \end{eqnarray}

です。そのため、\left(\frac{4\times 2}{9}\right)^2 の分子も 8 ではなくあえて 4\times 2 として第1項の分子 4\sqrt{5} と因数分解ができるように 4 を明示的に表に出しています。

常にこのような工夫をする癖をつけると、計算が楽になりミスが減ります。

まとめ

 平面図形の入試問題を取り上げ、パッと見たときの発想とそこからの具体的な解法を見てきました。平面図形は発想の引き出しが重要です。いい問題にたくさん触れることでその発想が鍛えられます。一生懸命考えるのも良いですが、流し読みで発想の引き出しを増やしていくのもまたよい勉強法です。このブログでは後者の方を重視し、アニメーションで楽に流し読みできる工夫をしていますので、他のページも見てください。例えば、

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