【円周角の定理#4】角の移動で相似が続々 一つの難問をしゃぶり尽くす発想豊かな勉強法

中学数学

ここで解いているのはたった一つの問題ですが、それをいろいろな角度から眺め、解いています。このような勉強をやっていれば、点と点の知識が線で結ばれていきます

結構な難しい問題ではありますが、ここまでしゃぶり尽くせば円周角の定理の難しい問題も自信がつくはずです。ぜひここで述べている勉強法をしてもらいたいです。

問題

線分 $\mathrm{AD}$ の長さは?

この問題は下記の記事の「四天王寺高校」の問題です。そこでは標準的な解法を解説していますが、ここではその「標準解法」を出発点に、視点を変えながら深く潜っていきます。

準備

四点が円上にある=方べきの定理

実際の入試では (1) で $\mathrm{BE}=2$ を求め、(2) で $\mathrm{AE}=x$, $\mathrm{ED}=y$ と置いて $xy$ の値を問う誘導 になっています。ここでは (1) は省略し、直接 (2) の $xy$ を求めるところから始めます。

方べきの定理は下記でしっかりと取り組みましたが、その本質は、四点が同一円周上にある ということです。

いま、点 $\mathrm{D}$ は $\triangle\mathrm{ABC}$ と同じ円周上にあるので方べきの定理が成り立ち、

$$xy=6\tag{1}\label{p7698eq1}$$

これがこの先使われていきます。その際はこの本質を思い出すため、「四点が同一円周上にある条件」と表します。

補助線と円周角がつくる「角度移動」

まずは、アニメーションで全体の流れをざっと眺めましょう。

補助線:円周角を浮き彫りにする

円周角を使いたいため $\mathrm{BD}$ と $\mathrm{DC}$ に補助線を引きます。

円周角1:角度が移動する

$$\angle\mathrm{DAC}=\angle\mathrm{DBC}\;(=”〇”)$$

円周角2:さらに角度が移動する

同様に、

$$\angle\mathrm{BAD}=\angle\mathrm{BCD}\;(=”〇”)$$

円周角3:別の角度も移動する

同様に円周角の定理から

$$\angle\mathrm{CDA}=\angle\mathrm{CBA}\;(=”×”)$$

最終的な形

以上を踏まえ、問題文から下記の状態までは条件反射的に発想できるようになりましょう。

補助線と円周角がつくる「角度移動」:余談

$\triangle\mathrm{BCD}$ は二等辺三角形です。

すなわち

  • 円に内接する三角形 $\mathrm{ABC}$
  • 三角形の一角 $\angle\mathrm{A}$ に角の二等分線
  • その先の円上の点 $\mathrm{D}$

のとき、

$\triangle\mathrm{BCD}$ は二等辺三角形

となります。これを逆手に取った別の問題を下記で扱うので、挑戦してみてください。

本丸:相似で長さを求める

相似の見方にはいくつか方法があります。頂上に登るにもいくつか登山ルートがあるように。

ルート1:裏返すと見える相似

準備で角度を移動させてたくさん同じ角度を作りました。ここからは、その角度移動が生み出す相似を使って、いよいよ本丸である $\mathrm{AD}$ の長さを求めていきます。

最初のルートは、図形を裏返すことで見えてくる相似です。これは標準解法としてもよく登場する、基本のルートです。次の三角形に相似が潜んでいることが分かります。

$$\triangle\mathrm{DAB}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{DBE}$$

この相似は、図形を裏返すと一気に見やすくなります。

対応する辺の比は次のように読み取れます。

$$4:2=z:y=(x+y):z$$

ここから連立方程式を立てます。

\begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l} 4y=2z\tag{2}\label{p7698eq2}\\ 4z=2(x+y) \end{array}\right. \end{eqnarray}

上式と下式から $z$ を消去すると、

\[4y = x+y\\ \therefore\;3y = x\]

これを、準備で得た「四点が同一円周上にある条件」の式 \eqref{p7698eq1} である $xy=6$ に代入すると、

\[3y^2 = 6\\ y=\sqrt{2}\]

$$x=3\sqrt{2}$$

$$x+y=4\sqrt{2}$$

$$\mathrm{AD}=4\sqrt{2}$$

これがルート1の結論です。

ルート2:隣の三角形に着目して裏返す

ルート1では $\triangle\mathrm{DAB}$ に着目しましたが、実はその隣の三角形に着目しても同じゴールにたどり着けます。つまり、どこを見るかが違うだけで、同じ相似の世界が広がっているのです。

次の相似に着目します。

$$\triangle\mathrm{ADC}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{CDE}$$

この相似も、図形を裏返すと一気に見やすくなります。

対応する辺の比は次のように読み取れます。

$$6:3=z:y=(x+y):z$$

ここから連立方程式を立てます。

\begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l} 6y=3z\\ 6z=3(x+y) \end{array}\right. \end{eqnarray}

上式と下式から $z$ を消去すると、

\[4y = x+y\\ \therefore\;3y = x\]

これはルート1と同じ式です。つまり、別の三角形に着目しても同じ関係式にたどり着くということです。

あとは準備で得た「四点が同一円周上にある条件」、$xy=6$ を使えば、

$$\mathrm{AD}=4\sqrt{2}$$

ルート2も同じゴールに到達しました。

ルート3:回転で見える相似

ルート1, 2では「裏返す」操作を使いました。ここでは、図形を回転させることで相似が見えてきます。

次の相似に着目します。

$$\triangle\mathrm{ADC}\unicode[sans-serif]{x223D}\triangle\mathrm{ABE}$$

図形をちょっと回転させると、対応する辺が自然にそろい、相似が一目で分かる形になります。

対応する辺の比は次のように読み取れます。

\[6:x = (x+y):4\\ x(x+y)=24\]

ここに、準備で得た「四点が同一円周上にある条件」となる式 $xy=6$ を組み合わせると、

\[x^2+6=24\\ \therefore\;x=3\sqrt{2}\]

$$y=\sqrt{2}$$

$$x+y=4\sqrt{2}$$

$$\mathrm{AD}=4\sqrt{2}$$

ルート3も同じゴールに到達しました。

まとめ:3つのルートは同じゴールに向かう

本丸では、3つの異なるルートを通って $\mathrm{AD}=4\sqrt{2}$ にたどり着きました。結局、求めていた図形はこういう図形だったことになります。

着目する三角形が違っても、裏返しても、回転させても、本質が同じなら同じゴールに到達します。安心して自分の信じた道を進んでください。

まとめ

一つの問題をいろいろな角度から眺め、しゃぶり尽くしてきました。ここで体験してもらったのは、単に $\mathrm{AD}$ の長さを求めるという作業ではありません。同じ結論に至るにも様々なルートがあるという、数学の本質的な面白さです。

補助線を引き、円周角を移動させ、相似を3通りのルートで見抜く。どのルートを通っても同じ答えにたどり着くという事実は、図形の世界がどれほど豊かで、どれほど多面的であるかを教えてくれます。

そして、こうした「しゃぶり尽くす」勉強こそが、知識の点と点を線で結び、発想力を育て、他の問題に出会ったときにも自然と手が動く力につながります。やみくもに問題数をこなすより、こうして一つの問題を深く味わう方が、はるかに強い土台になります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました