複素数 z を逆数にすると 1/z ですが、これには面白い性質があり、複素数 z が直線上を動くときその逆数は原点を通る円上を動き、z が原点を通らない円上を動くときその逆数は原点を通らない円上を動きます。
一見ややこしいですが、ここではそれらの全体像を示し統一的に理解します。ここでは計算はあまりせず、アニメーションを用いてイメージをつかみます。その結果、それらは全て円円変換であることが理解できます。
複素数 z の逆数 1z
複素数 z の逆数は 1z です。この両者は掛けると 1 になります。
z⋅1z=1
すなわち、図形的に考えるならば、下図のように青の複素数 z に対してその逆数 1z は赤のようになります。青の長さが例えば 3 なら、赤の長さは 13 といった具合、そして角度は x 軸に対して対称です。それにより両者を掛けると 1 になりますよね。実際、掛け算してプロットしたものが黄色です。

単位円を書いてあるのは、z が単位円の外なら 1z は単位円の中にあることを強調して理解するためです。
このことに注意して z をいろいろと動かしてみましょう。
z が単位円上にあれば、当然 1z も単位円上にあります。

そして、z が下図のように灰色の円上を動くとき、面白いことに 1z は x=1 という直線上を動きます。

この問題は25年度の東大に出題されました。
z が直線上を動くとき
イメージで理解
アニメーションで確認します。
青の直線を動かしてもその逆数である赤は円のままです。それも、原点を通る円。青の直線が原点に近づくにつれ、赤の円は大きくなります。そして、直線が原点を通るそのときだけ、円は直線になります。しかしこれも、このアニメーションで明らかなように、円の一部であることが分かるでしょう。



式で理解
直線は複素数 a を用いて次のように表せます。
|z|=|z−a|
これは、原点と複素数 a の点の垂直二等分線を表します。↓の記事を参考にしてください(直接該当箇所へはこちら)。
いま、ω=1z で変換するので、z=1ω と変形しこれを代入して、
|1ω|=|1ω−a|
両辺に |ωa| を掛けて左辺と右辺を入れ替えると、
|ω−1a|=|1a|
これは、
点 1a を中心とする半径 |1a| の円
を表します。↓の記事のここを参考にしてください。
z が原点を通らない円上を動くとき
イメージで理解
アニメーションで確認します。青の円に対して赤も円です。
青の円を同心で動かしても赤の円は円のままです。それも、原点を通らない円。青の円が原点に近づくにつれ、赤の円は大きくなります。そして、青の円が原点を通るそのときだけ、赤の円は直線になります。しかしこれも、このアニメーションで明らかなように、円の一部であることが分かるでしょう。



式で理解
円は複素数 a と正の数 r を用いて次のように表せます。
|z−a|=r
いま、ω=1z で変換するので、z=1ω と変形しこれを代入して、
|1ω−a|=r
両辺に |ωa| を掛けると、
|ω−1a|=r|a||ω|
つまり、
|ω−1a|:|ω|=r|a|:1
これは、
点 1a と原点からの距離が r|a|:1 の点の集合
を表し、円になります。↓の記事のここを参考にしてください。
まとめ
複素数 z の逆数 1z が描く図形をアニメーションでイメージしました。その結果、逆数変換は円円変換であることが理解できました。条件によっては直線が登場しますが、これも円の一部であることがアニメーションと式変形の両面から理解できました。





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