接線の方程式がある点を通るか通らないかは逆像法を使えばすぐに分かります。ここでは実際に出た大学入試問題を眺めることにより、大学入試といっても基礎的なところをしっかりと押さえることが重要なのだと再確認します。
慶応義塾大学・理工学部@25年度
曲線 $\mathrm{C}\,:\,y=\displaystyle\frac{1}{x-4}$ $(x>4)$ の接線で点 $\mathrm{Q}(1,-1)$ を通るものは存在しないことを証明せよ。
問題②(1)のみを抽出
この問題↑を見た瞬間に、この記事↓を思い出してほしいです。
接線の式 ($t$ の関数) が点 $\mathrm{Q}$ を通るとして、解 $t$ が存在するかどうかを調べます。
イメージはこんな感じ↓です。このイメージから $y=\displaystyle\frac{1}{x-4}$ は点 $\mathrm{Q}(1,-1)$ を通らないことは分かります。
解1. 逆像法:そこに解はあるんか
解
曲線 $\mathrm{C}\,:\,y=\displaystyle\frac{1}{x-4}$ 上の点 $(t,\,\displaystyle\frac{1}{t-4})$ $(t>4)$ における接線の方程式は
$$y=-\frac{1}{(t-4)^2}(x-t)+\frac{1}{t-4}\tag{1}\label{p7415eq1}$$
この接線が点 $\mathrm{Q}(1,-1)$ を通ることがあるかどうかを調べればよい。
すなわち $(1,-1)$ を代入した式
$$-1=-\frac{1}{(t-4)^2}(1-t)+\frac{1}{t-4}$$
が $t$ について解を持つかどうかを調べればよい。
これを $t$ について整理すると、
$$-(t-4)^2=-(1-t)+(t-4)$$
$$t^2+6t+11=0$$
判別式を $D$ として、
\begin{eqnarray}
\frac{D}{4} &=& 3^2-11\\
&=&-2<0
\end{eqnarray}
なので、$t$ は解を持たない。すなわち、接線は存在しない。
接線の方程式 \eqref{p7415eq1} について
サクッと接線の方程式を書いてしまいましたが、これは↓の記事を見てください。中学生カテゴリーですが、きっと役に立ちます。
すなわち今回の場合は、曲線 $\mathrm{C}\,:\,y=\displaystyle\frac{1}{x-4}$ を微分すると
$$y^\prime = -\frac{1}{(x-4)^2}$$
となるため、これさえ出れば上記のコツで一行で接線の式\eqref{p7415eq1}は書けます。
解2. 平行移動を思いつけば少し計算は楽になる
$x$ 軸方向に $-4$ だけ平行移動すれば、曲線 $\mathrm{C}$ は $y=\displaystyle\frac{1}{x}$ となり、簡単になります。こんなイメージ↓です。
解
題意は、曲線 $\mathrm{C}$、点 $\mathrm{Q}$ を $x$ 軸方向に $-4$ だけ平行移動して考えても同じである。すなわち、
曲線 $\mathrm{C^\prime}\,:\,y=\displaystyle\frac{1}{x}$ $(x>0)$ の接線で点 $\mathrm{Q^\prime}(-3,-1)$ を通るものは存在しないことを証明
すればよい。
曲線 $\mathrm{C^\prime}\,:\,y=\displaystyle\frac{1}{x}$ 上の点 $(t,\,\displaystyle\frac{1}{t})$ $(t>0)$ における接線の方程式は
$$y=-\frac{1}{t^2}(x-t)+\frac{1}{t}$$
この接線が点 $\mathrm{Q^\prime}(-3,-1)$ を通ることがあるかどうかを調べればよい。
すなわち $(-3,-1)$ を代入した式
$$-1=-\frac{1}{t^2}(-3-t)+\frac{1}{t}$$
が $t$ について解を持つかどうかを調べればよい。
これを $t$ について整理すると、
$$-t^2=-(-3-t)+t$$
$$t^2+2t+3=0$$
判別式を $D$ として、
\begin{eqnarray}
\frac{D}{4} &=& 1^2-3\\
&=&-2<0
\end{eqnarray}
なので、$t$ は解を持たない。すなわち、接線は存在しない。
まとめ
大学入試問題を見ました。実際の問題はこの後も続きますが、まずは(1)をスラスラと解くことが何よりも重要です。そしてそれは日ごろ発想を鍛えていれば決して難しくはありません。
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