3次元空間での直線の表現方法を紹介します。中でも入試問題を解く上ではベクトル方程式が便利ですので、是非とも習得してください。
直線の式の2通りの表し方
3次元空間に限らずですが、直線の式には2通りの表し方があります。それは、
- ベクトル方程式
- 軌跡方程式
です。3次元空間について問題風にして考えてみます。
点 $\mathrm{A}(2,7,-1)$, $\mathrm{B}(3,6,0)$ を通る直線 $l_1$ の方程式を求めよ。
ベクトル方程式
方向ベクトルは
$$\overrightarrow{\mathrm{AB}}=\begin{pmatrix}3\\6\\0\end{pmatrix}-\begin{pmatrix}2\\7\\-1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}$$
なので、ベクトル方程式の形で表せば、$t$ を任意の実数として、
$$l_1\; :\;\begin{pmatrix}x\\y\\x\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}2\\7\\-1\end{pmatrix}+t\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}\tag{1}\label{p6456eq1}$$
もちろん点 $\mathrm{B}$ を用いたこの形でもよい
$$l_1\; :\;\begin{pmatrix}x\\y\\x\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}3\\6\\0\end{pmatrix}+t\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}\tag{2}\label{p6456eq2}$$
どちらでも同じ点を表せるが $t$ の値は異なる
どちらでも構いませんが、直線上のある点を表現するための $t$ の値は両者で異なります。例えば
$$\mathrm{P}(4,5,1)$$
を表すため $t$ の値は、式$(\ref{p6456eq1})$では $t=2$ ですが、式$(\ref{p6456eq2})$では $t=1$ です。
式$(\ref{p6456eq1})$で $t=2$
$$\begin{pmatrix}x\\y\\x\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}2\\7\\-1\end{pmatrix}+2\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4\\5\\1\end{pmatrix}$$
式$(\ref{p6456eq2})$で $t=1$
$$\begin{pmatrix}x\\y\\x\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}3\\6\\0\end{pmatrix}+1\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4\\5\\1\end{pmatrix}$$
軌跡方程式
軌跡方程式はベクトル方程式から $t$ の値を消去すれば求まります。例えば式$(\ref{p6456eq1})$から $t$ の値を消去するには、それぞれ $x$, $y$, $z$ の成分に書き下して $t=$ の形にして結べばよいです。式$(\ref{p6456eq1})$を成分に書き下すと、
\begin{eqnarray}
\left\{\begin{array}{l}
x=2+t\\
y=7-t\\
z=-1+t
\end{array}\right.
\end{eqnarray}
より、
$$l_1\; :\;(t=)\;\;x-2=-y+7=z+1$$
です。答案用紙には $t=$ の部分は書かなくてよいです。
もちろん式$(\ref{p6456eq2})$を用いても同じ結果を得られます。
\begin{eqnarray}
\left\{\begin{array}{l}
x=3+t\\
y=6-t\\
z=t
\end{array}\right.
\end{eqnarray}
より、
$$l_1\; :\;(t=)\;\;x-3=-y+6=z$$
でも構いません。両方とも同じ式を表し、正解です。試しに先ほどの$(4,5,1)$をそれぞれに代入してみてください。等式はどちらも成り立ちます。
パラメータである $t$ を消去して軌跡方程式を求めましたが、これはまさに↓の記事のことです。
2次元で同じことを考えればしっくりくるかもしれない
上記は3次元空間で考えていますが、もしかしたらしっくりこない人もいるかもしれません。特に軌跡方程式の方が。3次元は確かに不慣れなため難しいですが、2次元での軌跡方程式は中学時代から取り扱っていて慣れているので、こちらで理解する方がしっくりくるかもしれません。例えば次のような問題を考え、あえてベクトル方程式を作ってから $t$ を消去して軌跡方程式に直してみます。
点 $\mathrm{C}(1,2)$, $\mathrm{D}(2,3)$ を通る直線 $l_2$ の方程式を求めよ。
方向ベクトルは
$$\overrightarrow{\mathrm{CD}}=\begin{pmatrix}2\\3\end{pmatrix}-\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}$$
なので、ベクトル方程式の形で表せば、$t$ を任意の実数として、
$$l_2\; :\;\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}+t\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}$$
すなわち、
\begin{eqnarray}
\left\{\begin{array}{l}
x=1+t\\
y=2+t
\end{array}\right.
\end{eqnarray}
より、
$$l_2\; :\;(t=)\;\;x-1=y-2$$
となり、これはすなわち、
$$l_2\; :\;y=x+1$$
ですので、いつも見慣れた軌跡方程式になります。
ベクトル方程式の使い方の例
この形もベクトル方程式
内分点・外分点の問題でよく出てくるこの式も、ベクトル方程式です。
$$\overrightarrow{\mathrm{OP}} = t\,\overrightarrow{\mathrm{OA}} + (1-t)\,\overrightarrow{\mathrm{OB}}$$
実際、これを変形すると、
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{OP}} &=& \overrightarrow{\mathrm{OB}} + t\,(\overrightarrow{\mathrm{OA}}-\overrightarrow{\mathrm{OB}})\\
&=& \overrightarrow{\mathrm{OB}} + t\,\overrightarrow{\mathrm{BA}}
\end{eqnarray}
となり、上記で見たベクトル方程式の形と一致します。さらに詳しい解説は下記↓の記事にあります。該当箇所に直接飛ぶリンクはこちら。
平面と直線の交点
この問題は点と平面との距離を求める問題において、その途中に平面と直線との交点を求めるステップが表れます。
平面 $x+2y+2z=2$ と点 $\mathrm{P}(-2,-1,0)$ との距離 $d$ を求めよ。
解答は↓の記事にて。該当箇所に直接飛ぶリンクはこちら。
また、2次元版もあります↓。該当箇所に直接飛ぶリンクはこちら。
ねじれの位置にある2直線問題
24年度の共通テストに出てきた次の問題が良い例題です。
点Oを原点とする座標空間に4点 A$(2,7,-1)$, B$(3,6,0)$, C$(-8,10,-3)$, D$(-9,8,-4)$ がある。$\mathrm{A}$, $\mathrm{B}$ を通る直線を $l_1$ とし点 $\mathrm{P}$ がこの上を、$\mathrm{C}$, $\mathrm{D}$ を通る直線を $l_2$ とし点 $\mathrm{Q}$ がこの上を動く。このとき、線分 $\mathrm{PQ}$ の長さが最小になるときの $\mathrm{P}$, $\mathrm{Q}$ の座標を求めよ。
解答は↓の記事にて。該当箇所に直接飛ぶリンクはこちら。
まとめ
空間での直線の表し方とその使い方を見てきました。それにはベクトル方程式を用いるのが便利です。ベクトル方程式は平面問題でも使え、非常に使い勝手が良いので、是非習得してください。
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