【数学2026:共通テスト】複素数の動きを”図”でつかむ良問

高校数学

2026年度の共通テスト数学から、何度も解いて実力が着く問題を一つ選びました。問題は簡潔にしてあります。実際には丁寧な誘導がついていたりしますが、逆に煩雑になるためここでは省略しています。

複素数の逆数は良く出るテーマです。今回は原点を中心とする円の逆数なので簡単ですが、一般論を扱った下記の記事もこの後読んでみてください。

数学C 第7問

$z$:$0$ でない複素数。
$\omega$:$\omega=z+\dfrac1z$
$\mathrm{C}$:原点を中心とする半径 $r$ の円

$z$ が $\mathrm{C}$ 上を動くとき、

(1) $r=1$ のとき、$\omega$ の軌跡は?
(2) $r\ne 1$ のとき、$\omega$ の軌跡は?
 $\omega=x+y\,i$ と置いて、$x$, $y$ の式で表せ。

(3) $r\ne 1$のとき、$\omega^2$ の軌跡は?
 ヒント:$z^2+\dfrac{1}{z^2}$ の軌跡を考える。$z^2$ は
  $\mathrm{C^\prime}$:原点を中心とする半径 $r^2$ の円
 を描く。(すなわち、(2)の考えが使える)

(1) $r=1$ のとき、$\omega$ の軌跡は?

実験

実際に実験してみましょう。

 $z$:半径 $1$ の円上を動く
 $\dfrac1z$:半径 $1$ の円上を $z$ とは反対向きに動く

ので、

 $z+\dfrac1z$:$x$ 軸上を $-2~2$ まで動く

ことになります。

解答

$z=$$\cos\theta+i\,\sin\theta$ と置けます。このとき、

$\dfrac1z=$$\cos\theta-i\,\sin\theta$ (下記解説参照)

よって、

$z+\dfrac1z=$$(\cos\theta+i\,\sin\theta)$$+$$(\cos\theta-i\,\sin\theta)$$=$$2\cos\theta$

ゆえに、下図の黄色線となります。

解説:$\dfrac1z$ について

$\dfrac1z$:半径 $1$ の円上を $z$ とは反対向きに動く

あるいは

$\dfrac1z=$$\cos\theta-i\,\sin\theta$

を、イメージ的な解釈と式での解釈両方で少し深堀りしましょう。

イメージ的な解釈

$\dfrac1z$ は $z$ と掛けて $1$ です。複素数の掛け算は、

  • 大きさ:両者の積
  • 角度:両者の和

したがって、

  • 大きさ:$|z|=1$ ⇒ $\left|\dfrac1z\right|=1$
  • 角度:$\dfrac1z$ の角度は $z$ と反対($x$ 軸対称)

です。ゆえに、

$\dfrac1z$:半径 $1$ の円上を $z$ とは反対向きに動く

と理解できます。

式での解釈

$$z=\cos\theta + i\,\sin\theta$$

と置くと、

$\dfrac1z = \dfrac{1}{\cos\theta+i\,\sin\theta} = $$\cos\theta – i\,\sin\theta$

と計算できるので、同様に理解できます。

(2) $r\ne 1$ のとき、$\omega$ の軌跡は?

実験

実際に実験してみましょう。

 $z$:半径 $r$ の円上を動く
 $\dfrac1z$:半径 $\dfrac1r$ の円上を $z$ とは反対向きに動く

ので、

 $z+\dfrac1z$:横長の楕円

になります。下図は $r=2$ としたものです。

解答

$z=r(\cos\theta+i\,\sin\theta)$ と置けます。このとき、

$\dfrac1z=\dfrac{1}{r(\cos\theta+i\,\sin\theta)}=\dfrac1r(\cos\theta-i\,\sin\theta)$

よって、

$$\omega=z+\frac1z=\left(r+\frac1r\right)\cos\theta+i\,\left(r-\dfrac1r\right)\sin\theta$$

問題文より $\omega=x+y\; i$ と置くと、

$$x=\left(r+\frac1r\right)\cos\theta$$

$$y=\left(r-\dfrac1r\right)\sin\theta$$

$\cos^2\theta+\sin^2\theta=1$ を用いて $\theta$ を消去すると、

$$\frac{x^2}{\left(r+\dfrac1r\right)^2}+\frac{y^2}{\left(r-\dfrac1r\right)^2}=1$$

解説:楕円を描く

これは楕円です。それも、

  • $x$ 軸との交点:$\pm\left|r+\dfrac1r\right|$ ($y=0$ と置いた $x$)
  • $y$ 軸との交点:$\pm\left|r-\dfrac1r\right|$ ($x=0$ と置いた $y$)

$r=2$ とした場合には、$x$ 軸とは $\pm 2.5$ で、$y$ 軸とは $\pm 1.5$ で交わります。

$r=0.5$ とした場合も、$x$ 軸とは $\pm 2.5$ で、$y$ 軸とは $\pm 1.5$ で交わります。

つまり、$r=1$ のときは (1) で見たように $x$ 軸につぶれる線分に、$r\ne 1$ のときは $x$ 軸方向に長い楕円になります。

$x$ 軸方向に長いことは下記の計算で分かります。

$$\left(r+\dfrac1r\right)^2-\left(r-\dfrac1r\right)^2=4>0$$

(3) $r\ne 1$のとき、$\omega^2$ の軌跡は?

実験

実際に実験してみましょう。その前に、今回は $\omega^2$ なので、

$$\omega^2=\left(z+\frac1z\right)^2=z^2+\frac{1}{z^2}+2$$

に注意します。

 $z^2$:半径 $r^2$ の円上を $z$ の倍の角速度で動く

 $\dfrac{1}{z^2}$:半径 $\dfrac{1}{r^2}$ の円上を $z$ とは反対向きに $z$ の倍の角速度で動く

ので、

 $\omega^2=z^2+\dfrac{1}{z^2}+2$:横長の楕円を $x$ 方向に $2$ だけ平行移動

になります。下図は $r=2$ としたものです。ただし、青は $z$赤は $\dfrac1z$ です。

選択肢

実際の問題には選択肢があります。上の実験結果から③が正解であろうと思われます。そのことをヒントを元に絞り込んでいきましょう。

解答

ヒント:$z^2+\dfrac{1}{z^2}$ の軌跡を考える。$z^2$ は
 $\mathrm{C^\prime}$:原点を中心とする半径 $r^2$ の円
を描く。(すなわち、(2)の考えが使える)

を用います。

$$\omega^2=\left(z+\frac1z\right)^2=z^2+\frac{1}{z^2}+2$$

ここで $z^2+\dfrac{1}{z^2}$ の軌跡を考える。

$z=r(\cos\theta+i\,\sin\theta)$ と置くと、

 $z^2=r^2(\cos2\theta+i\,\sin2\theta)$

 $\dfrac{1}{z^2}=\dfrac{1}{r^2}(\cos2\theta-i\,\sin2\theta)$

$$\therefore\; z^2+\frac{1}{z^2}=\left(r^2+\frac{1}{r^2}\right)\cos2\theta+i\,\left(r^2-\frac{1}{r^2}\right)\sin2\theta$$

これを (2) の考え方に従って $x$, $y$ の式で表すと、

$$\frac{x^2}{\left(r^2+\dfrac{1}{r^2}\right)^2}+\frac{y^2}{\left(r^2-\dfrac{1}{r^2}\right)^2}=1$$

これは ($r$ が $r^2$ に変わっただけで) 本質的には(2)と同じ形なので、(2)と同様に

横長の楕円

であることは分かります。

さらに $\omega^2$ には “$+2$” があることに注意すると選択肢の中では、

③⑤

に絞れます。あとは、長軸が $y$ 軸をまたぐかどうか、です。


つまり、長軸半径は $r^2+\dfrac{1}{r^2}$ なので、これが $2$ より大きいか小さいか、ということです。ここで相加相乗平均を考えます。

$r^2+\dfrac{1}{r^2}\ge 2\sqrt{r^2\cdot\dfrac{1}{r^2}}=2$, 等号は $r=1$ のとき

なので、$r\ne 1$ では $2$ より大きく、$y$ 軸をまたぎます。すなわち答えは③です。

$r=2$ (左) と $=0.5$ (右) の結果を示します。

解説:相加相乗平均

長軸半径が $2$ よりも大きいことを示すために相加相乗平均を用いましたが、イメージとして理解できるようにしておきたいです。すなわち、

長軸半径:$r^2+\dfrac{1}{r^2}$

という状況に於いて、$r$ の値を変えてその値がどうなるのかな、と考えてみることです。

例えば、$r=10$ といった極端に大きい場合を考えると、長軸半径は大きい値です。

また、$r=0.1$ といった極端に小さい場合も、長軸半径は大きい値です。

$r$ を大きくすれば $r^2$ が大きくなり、$r$ を小さくすれば $\dfrac{1}{r^2}$ が大きくなります。長軸半径を小さくしようとすれば、$r^2$ と $\dfrac{1}{r^2}$ の塩梅がいいところ、すなわち $r=1$ がそれに相当するとイメージできると思います。この時の長軸半径は $r^2+\dfrac{1}{r^2}=2$ なので、これよりも大きくなるのだな、と分かります。

まとめ

(1) 半径 $1$ のとき、$z=\cos\theta+i\,\sin\theta$ より $\omega=z+\dfrac1z=2\cos\theta$ となり、像は $x$ 軸上の線分 に一致する。

(2) 半径 $r$ のとき、 $\omega=\left(r+\dfrac1r\right)\cos\theta+i\left(r-\dfrac1r\right)\sin\theta$ となり、横長な楕円 を描く。

(3) $\omega^2=z^2+\dfrac{1}{z^2}+2$ と分解でき、 $z^2+\dfrac{1}{z^2}$ が (2) と同型の楕円を描くため、 $\omega^2$ はその楕円を $x$ 方向に 2 平行移動した軌跡 になる。

いずれも、$z$ と $\dfrac1z$ の「大きさ」と「角度」の関係から 線分 → 楕円 → 平行移動した楕円 へと体系的に導かれる。

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