【軌跡はパラメータを消去】なぜこれで軌跡が求まるのかを完全理解

高校数学

 ここではパラメータ消去問題について腹落ちすることを目的にします。目標はこの動画の理解です。最後に少しおまけでピカチュウのパラメータ表示を紹介します。

問題1:$mx-y=0$, $x+my=1$

 ここではまずは動画を用いて問題のイメージをつかみ、その解答を確認することで理解したいゴールとモヤモヤする部分を明確にし、その上でモヤモヤする部分を解消します。次の問題を考えます。

2直線 $mx-y=0$, $x+my=1$ がある。$m$ が実数全体を動くとき、2直線の交点 $\mathrm{P}(x,y)$ の軌跡を求めよ。

この投稿ではガッツリと説明していますが、サクッと理解したい方はこちらがおススメです。

該当箇所に直接行きたい場合はこちら

イメージをつかむ

 2直線にはパラメータ $m$ が入っていますが、これは $m$ が決まれば2直線が決まる、ということです。そして、交点 $\mathrm{P}$ が決まります。

$m$ が決まる $\Rightarrow$ 2直線が決まる $\Rightarrow$ 交点 $\mathrm{P}$ が決まる

つまり、$m$ を様々に変えることで点 $\mathrm{P}$ は様々に変わります。こんなイメージです。

$m$ が様々に変わると、交点が様々に変わっていきます。どうやら交点の軌跡は、中心 $\left(\displaystyle\frac{1}{2},\, 0\right)$ で半径 $\displaystyle\frac{1}{2}$ の円になりそうです。ただし、原点 $(0,0)$ には到達しそうにありません。

解答を確認

 直線の式をそれぞれ
$$mx-y=0\tag{1}\label{p1459eq1-1}$$
$$x+my=1\tag{2}\label{p1459eq1-2}$$
と置く。

(i) $x\ne 0$ のとき、\eqref{p1459eq1-1}より $m=\displaystyle\frac{y}{x}$
 これを\eqref{p1459eq1-2}に代入して
$$x+\frac{y}{x}\cdot y=1$$
 両辺に $x$ を掛けて、
$$x^2+y^2=x$$
 となるから、これを整理すると、
$$\left(x-\frac{1}{2}\right)^2+y^2=\frac{1}{4}\tag{3}\label{p1459eq1-3}$$
 \eqref{p1459eq1-3}において、$x=0$ とすると $y=0$
 よって、$x\ne 0$ のとき、\eqref{p1459eq1-3}のうち $(0,0)$ を除く。

(ii) $x=0$ のとき、\eqref{p1459eq1-1}より $y=0$。これは\eqref{p1459eq1-2}を満たさない。

(i)(ii)より、求める軌跡は、
中心 $\left(\displaystyle\frac{1}{2},\, 0\right)$ で半径 $\displaystyle\frac{1}{2}$ の円。ただし、$(0,0)$ は除く。

モヤモヤを解消

 主なモヤモヤは次の2つかな、と思います。他にモヤモヤがあればコメントください。

  • なぜ $x\ne 0$ と $x=0$ で場合分けするの?
  • 「$m=\displaystyle\frac{y}{x}\;$ これを\eqref{p1459eq1-2}に代入して」これで軌跡が求まるのがモヤモヤ

二つ目の方がより本質的で、一つ目は二つ目の中の例外処理的なものなので、二つ目の方から考えます。

「$m=\displaystyle\frac{y}{x}$ これを\eqref{p1459eq1-2}に代入して」について

 これを理解するためには $m=\displaystyle\frac{y}{x}$ の意味を理解するところから始めましょう。

$m=\displaystyle\frac{y}{x}$ は \eqref{p1459eq1-1} を変形したものです。\eqref{p1459eq1-1} は何だったかと思いだせば、直線です。それも、$m$ が決まれば決まる直線です。

例えば $m=1$ なら \eqref{p1459eq1-1} は直線 $y=x$ であり、点 $(1,1)$ や $(2,2)$, $(3,3)$ といった点がその直線上の点です。逆に、例えば点 $(1,1)$ が指定されれば、この時の \eqref{p1459eq1-1} の直線は $y=x$ であった、つまり、$m=1$ であった、ということです。

つまり、点を先に与えたときにその点は \eqref{p1459eq1-1} の直線のどの $m$ のものであったのかを求める式になっています。次のようなイメージです。

 例えば点 $(1,2)$ を与えれば、それを通る \eqref{p1459eq1-1} は $m=2$ であることを意味します。

 ではこれを \eqref{p1459eq1-2} に代入するとはどういうことなのでしょうか。結論から言えばそれは、

与えた点 $(x,y)$ が\eqref{p1459eq1-2}を通るかを調べている

のです。

このことを眺めてみましょう。例えば、点 $(1,1)$ を与えた際に書かれるべき赤の線が下図です。

 このとき、残念ながら赤の線は点 $(1,1)$ を通りません。ではこのとき \eqref{p1459eq1-2} には何が起こっているでしょうか。

\eqref{p1459eq1-2}の $x+my=1$ に $m=1$ と $(1,1)$ を入れると、
$$1+1\times 1\ne 1$$
であり、成り立っていません。つまり、点 $(1,1)$ は \eqref{p1459eq1-2} を通らないのです。

では、同じ $m=1$ でも点 $(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{2})$ ではどうでしょうか。下図のようになります。

 今度は赤の線は点 $(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{2})$ を通りました。同じようにこのとき \eqref{p1459eq1-2} には何が起こっているでしょうか。

\eqref{p1459eq1-2}の $x+my=1$ に $m=1$ と $(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{2})$ を入れると、
$$\displaystyle\frac{1}{2}+1\times \displaystyle\frac{1}{2} = 1$$
であり、成り立っています。つまり、同じ $m=1$ でも点 $(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{2})$ なら成り立つわけで、\eqref{p1459eq1-2} を通るわけです。

 つまり、点 $(x,y)$ を与えたときに\eqref{p1459eq1-1}で判明した $m$ の値を\eqref{p1459eq1-2}に代入するとは、

与えた点 $(x,y)$ が\eqref{p1459eq1-2}を通るかを調べている

ということです。

 だんだんややこしくなってきたので、もう一度よく、\eqref{p1459eq1-1} と \eqref{p1459eq1-2} を観察しましょう。ここでは、\eqref{p1459eq1-1} を \eqref{p1459eq1-2} に代入した\eqref{p1459eq1-4}の状態で観察します。

$$x+\frac{y}{x}\cdot y=1\tag{4}\label{p1459eq1-4}$$

真ん中の $\displaystyle\frac{y}{x}$ は $m$ なので、点 $(x,y)$ を与えた際に \eqref{p1459eq1-1} がどのような $m$ であったのかを表しています。しかし一方で点 $(x,y)$ は \eqref{p1459eq1-4} をいわば強制的に●●●●満たさせられているので、例えば点 $(1,1)$ にはその資格がなく、点 $\left(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{2}\right)$ にはその資格がある、ということになります。

そして、\eqref{p1459eq1-4} の $\displaystyle\frac{y}{x}$ の部分はもちろん、$\left(\displaystyle\frac{1}{2}, \displaystyle\frac{1}{2}\right)$ だけではなく他の $m$ の値でも、それも任意の実数で同様であり、\eqref{p1459eq1-1} も \eqref{p1459eq1-2} も成り立つ $(x,y)$ だけが \eqref{p1459eq1-4} が成り立つので、結局、

\eqref{p1459eq1-1} と \eqref{p1459eq1-2} から $m$ を消去した \eqref{p1459eq1-4} が成り立つということは
\eqref{p1459eq1-1} と \eqref{p1459eq1-2} の両方を満たす点、つまり交点である

ということになります。そして $m$ を消去する際には $(x,y)$ にはある一点を除いて制限を設けていないため、\eqref{p1459eq1-4}が成り立ちさえすればどの $(x,y)$ でもよい、ということです。

そして、制限を設けたある一点というのが $x=0$ です。除いた上で特別に調べます

 最後に、ちょっと見方を変えれば以上のことは実は当たり前です。というのも、\eqref{p1459eq1-4} を求めているのは、\eqref{p1459eq1-1} と \eqref{p1459eq1-2} の連立方程式を解いていることにほかならず、連立方程式の解はグラフの交点であるからです。

この当たり前感は次の投稿を見るとさらにうなずけます。

該当箇所に直接行きたい場合はこちら。ここでは3次元空間上での交点としてこの問題をとらえています。

\eqref{p1459eq1-1} と \eqref{p1459eq1-2} からパラメータを消去しているとは、連立方程式を解いていることにほかならない。連立方程式の解は交点なので、解いた解である \eqref{p1459eq1-4} (当然\eqref{p1459eq1-3}も) は交点の集合(軌跡)となる

「なぜ $x\ne 0$ と $x=0$ で場合分けするの?」について

 このモヤモヤについても、上の説明の「除いた上で特別に調べる」のくだりを理解すればすっきりとしたのではないかと思いますが、今一度復習を兼ねてこれだけのモヤモヤを取り上げて考えてみます。

この問いに対する形式的な回答は、

$m$ を求める際、$x=0$ だと分母が $0$ になるから

ですが、それがどのような意味を持つのかがしっくりこず、モヤモヤしているのではないかと思います。

このモヤモヤをすっきりとさせるため、今一度 $m = \displaystyle\frac{y}{x}$ の式をかみしめましょう。これは、任意の点 $(x,y)$ が与えられた際、\eqref{p1459eq1-1}がその点を通るようにする $m$ の値を求める式です。例えば、\eqref{p1459eq1-1}が点 $(1,2)$ を通るためには $m=2$ にすればよいです。

しかしながら $x=0$ のときだけは事情が異なります。例えば、\eqref{p1459eq1-1}が点 $(0,1)$ を通るようにしたい、と思っても、それに対応する $m$ の値がありません。唯一、$(0,0)$ だけが、\eqref{p1459eq1-1}が通りえます(しかもこの時は $m$ の値はいくつでもよい)。このように、$x=0$ のときだけは事情が異なるため、場合分けをしています。

逆に言えば、$x\ne 0$ のときは、それに対応する $m$ の値が必ずあるので、何の問題もなくことは進みます。

 ここまで分かっても、もしかしたらまだモヤモヤはあるかもしれません。おそらくそれは、

  • $x=0$ のとき、\eqref{p1459eq1-1}より $y=0$。これは\eqref{p1459eq1-2}を満たさない。

の部分ではないでしょうか。最後にこれについてのモヤモヤを解消しましょう。

先ほど見たように、$x=0$ の中で\eqref{p1459eq1-1}が通り得るのは $y=0$ だけですが、この $(0,0)$ を\eqref{p1459eq1-2}は通り得るでしょうか。通り得ません。動画では $m=\pm 20$ で打ち切っていますが、どんなに $m$ を変えても $(0,0)$ には到達しえないことはこの動画からも理解できると思います。

このことは式ではどのように現れるでしょうか。\eqref{p1459eq1-2}が $(0,0)$ を通ることがあるならば、それに対応する $m$ の値が存在するはずです。しかし、$(0,0)$ を入れたとき、それに対応する $m$ の値は求められません。これにより\eqref{p1459eq1-2}は $(0,0)$ を通らないことが式の上からも分かるわけです。

 以上をまとめると、次のようになります。

連立方程式を解く過程での割り算には注意!
分母 $0$ はあり得ないので、そのケースは例外処理として特別に扱う

問題2:$mx-y=0$, $x+my=m$

 先ほどの問題とほぼ同じですが、例外処理の仕方に慣れるため、あるいはさらに腹落ちするため、あえて似て非なる問題を作りました。

2直線 $mx-y=0$, $x+my=m$ がある。$m$ が実数全体を動くとき、2直線の交点 $\mathrm{P}(x,y)$ の軌跡を求めよ。

イメージをつかむ

 先ほどの問題と同様、$m$ を様々に変えることで点 $\mathrm{P}$ は様々に変わります。今度はこんなイメージです。

先ほどと少し異なるのは、先ほどは原点 $(0,0)$ が特殊点であり、つまり通りえなかった点であったのですが、今回は通っています。

そして、$m$ が様々に変わると、交点が様々に変わっていきます。どうやら今回は交点の軌跡は、中心 $\left(0,\displaystyle\frac{1}{2}\right)$ で半径 $\displaystyle\frac{1}{2}$ の円になりそうですが、通らないのは原点ではなく $(0,1)$ のようです。

解答を確認

 直線の式をそれぞれ
$$mx-y=0\tag{1}\label{p1459eq2-1}$$
$$x+my=m\tag{2}\label{p1459eq2-2}$$
と置く。

(i) $x\ne 0$ のとき、\eqref{p1459eq2-1}より $m=\displaystyle\frac{y}{x}$
 これを\eqref{p1459eq2-2}に代入して
$$x+\frac{y}{x}\cdot y=\frac{y}{x}$$

両辺に $x$ を掛けて、
$$x^2+y^2=y$$
となるから、これを整理すると、
$$x^2+\left(y-\frac{1}{2}\right)=\frac{1}{4}\tag{3}\label{p1459eq2-3}$$

\eqref{p1459eq2-3}において、$x=0$ とすると $y=0, 1$
よって、$x\ne 0$ のとき、\eqref{p1459eq2-3}のうち $(0,0)$, $(0,1)$ を除く。

(ii) $x=0$ のとき、\eqref{p1459eq2-1}より $y=0$
$x=0$, $y=0$ を\eqref{p1459eq2-2}に代入すると、$m=0$ のとき\eqref{p1459eq2-2}を満たす。
すなわち、$(0,0)$ は条件を満たす。

(i)(ii)より、求める軌跡は、
中心 $\left(0,\displaystyle\frac{1}{2}\right)$ で半径 $\displaystyle\frac{1}{2}$ の円。ただし、$(0,1)$ は除く。

モヤモヤを解消

 モヤモヤの部分は今回の問題が前回の問題と異なる部分で、次の部分だと思います。

\eqref{p1459eq2-3}において、$x=0$ とすると $y=0, 1$
よって、$x\ne 0$ のとき、\eqref{p1459eq2-3}のうち $(0,0)$, $(0,1)$ を除く。

(ii) $x=0$ のとき、\eqref{p1459eq2-1}より $y=0$
$x=0$, $y=0$ を\eqref{p1459eq2-2}に代入すると、$m=0$ のとき\eqref{p1459eq2-2}を満たす。
すなわち、$(0,0)$ は条件を満たす。

まず、「\eqref{p1459eq2-3}において、$x=0$ とすると $y=0,1$」です。これは下の図を表しています。

つまり、\eqref{p1459eq2-3}が黒の軌跡円で、$x=0$ は赤丸の $y=0,1$ です。

$x=0$ はグラフでは青の線ですが、これに対応する $m$ の値は存在しないため(i)においてはひとまず考えないことにしており、従って次のように除いて●●●いるのです。

  • よって、$x\ne 0$ のとき、\eqref{p1459eq2-3}のうち $(0,0)$, $(0,1)$ を除く

 そして、(i)で除いた値 $x=0$ を(ii)で改めて検証しているのです。(i)では $m$ を仲介して交点の座標を求めていたのですが、(ii)では仲介せずに直接に交点の座標を求めています

すなわち、「$x=0$ のとき、\eqref{p1459eq2-1}より $y=0$」というのが、$m$ を仲介せずに交点の候補●●●●●を求めています。交点の候補と表現したのは、\eqref{p1459eq2-2}も満たして初めて交点になるからであり、続きの記述があります。再掲すると、

  • $x=0$, $y=0$ を\eqref{p1459eq2-2}に代入すると、$m=0$ のとき\eqref{p1459eq2-2}を満たす。

これが、\eqref{p1459eq2-1}で得た交点の候補が\eqref{p1459eq2-2}でも満たされている、つまり交点であることを確認したものです。

 モヤモヤ解消の説明は以上です。どうでしょうか。仲介役(パラメータ)である $m$ の値が存在しない部分を別建てで検証するために場合分けをしている気持ちが腹落ちできたでしょうか。

まとめ

 パラメータを含む2式の交点の軌跡はパラメータを消去したら得られます。そのことを見てきました。おさらいすると、ある点 $x$, $y$ を与えたときに式(1)で判明したパラメータ $m$ の値を式(2)に代入するとは、その点が式(2)を通るかどうかを調べていることを意味しますが、そのようになる $x$, $y$ とは式(1),(2)の交点にほかなりません。従って、式(1),(2)からパラメータ $m$ を消去して得られる式は式(1),(2)の交点の座標を表し、軌跡となります。

しかし実は一方で、このように無邪気にパラメータを消去するだけでは落とし穴にハマるケースもあります。どのような場合にそうなるのか、↓の記事で詳しく解説しているのでそちらもあわせて見てください。

おまけ:ピカチュウのパラメータ表示

 ピカチュウのような曲線です。ものすごい式が出てきていますが、よく見ると、

\begin{eqnarray}
x(t) &=& \cdots\\
y(t) &=& \cdots
\end{eqnarray}

の形です。ここから単純にパラメータ $t$ を消すことはおそらくできませんが、$t$ の値を変えていって愚直に計算した結果を $(x,y)$ 平面にプロットしていけばこのようになる、というものです。つまり、ここでは「軌跡はパラメータを消去」などと題目にうたっていますが、より正確に表現すれば、「パラメータが消去できれば直接 $x$ と $y$ の関係が分かる」だけであり、軌跡自体はパラメータを愚直に変化させて計算すれば出てきます

コメント

タイトルとURLをコピーしました