大学入試の数学では複素数平面に関する問題が頻出し、特に図形的な理解が求められる場面が多くあります。本記事では、2025年度の入試問題に登場した複素数の軌跡問題を取り上げ、アポロニウスの円の性質や図形的アプローチを活用した解法を紹介します。複素数をより直感的に理解し、定期テストや入試に役立てましょう。
慶応義塾大学・理工学部
複素数平面上で、方程式 |z+i|=2|z−√3| を満たす点 z 全体が表す図形は、中心が[ ]、半径が[ ]の円である。
解1:アポロニウスの円から
|z+i|:|z−√3|=2:1
より、求める図形は点 A(0,−1), 点 B(√3,0) を 2:1 に内分する点 C(2√33,−13), 及び外分する点 D(2√3,1) を直径とする円となるから、
中心:(4√33,13)
半径:43
の円。
解2:2乗して計算
両辺を2乗して、
(z+i)¯(z+i)=4(z−√3)¯(z−√3)(z+i)(¯z−i)=4(z−√3)(¯z−√3)z¯z−zi+¯zi+1=4(z¯z−√3z−√3¯z+3)3z¯z−4√3(z+¯z)+(z−¯z)i+11=0z¯z−4√33(z+¯z)+13(z−¯z)i+113=0(z−(4√33+13i))¯(z−(4√33+13i))=169|z−(4√33+13i)|2=(43)2
より、
中心:(4√33,13)
半径:43
の円。
解1の方がラク
図形的に理解できるならその方が圧倒的に楽です。これは下記の東大の問題でも同様です(解2)。ただし、それに気づくのは難しいかもしれません。
複素数平面とアポロニウスの円の基礎はこちら↓に戻って復習しましょう。(直接該当箇所に移動はこちら)
東京大学
複素数平面上の点 12 を中心とする半径 12 の円の周から原点を除いた曲線を C とする。
(1) 曲線 C 上の複素数 z に対し、1z の実部は 1 であることを示せ。
(2)(3)は省略
解1:式変形で解く
実数 θ (−π<0<π) を用いて z は次のように表せる。
z=12+12(cosθ+isinθ)
よって、
12z=11+cosθ+isinθ=11+cosθ+isinθ⋅1+cosθ−isinθ1+cosθ−isinθ=1+cosθ−isinθ(1+cosθ)2+sin2θ=1+cosθ−isinθ1+2cosθ+cos2θ+sin2θ=1+cosθ−isinθ2(1+cosθ)=12–sinθ2(1+cosθ)i
∴1z=1−sinθ1+cosθi
示せた。
解2:図形的に解く
C は z を用いて次のように表せる。
|z−12|=12
この両辺を |2z| 倍すると、
|2−1z|=|1z|
となるが、これは、
点 1z は複素数平面上で (2,0) と (0,0) の垂直二等分線
を表し、実部は 1 である。
解2の方がラク
こちらも図形的に理解できるならその方がラクではあります。しかし |2z| を掛けることに気づくのは結構難しいと思いますので、まずは解1のように素直に解けるようになることが重要と思います。
複素数平面と垂直二等分線の基礎はこちら↓に戻って復習しましょう。(直接該当箇所に移動はこちら)
早稲田大学
複素数平面上で、複素数 z が円 |z|=1 の上を動くとき、
ω=(1+√22)z+(1−√22)1z
を満たす点 ω の軌跡を C とする。次の問いに答えよ。
(1) C はどのような図形か。複素数平面上に図示せよ。
(2)(3)は省略。
解:|z|=1 の料理の仕方をマスターしよう!
|z|=1 より 0≤θ<2π の実数として
z=cosθ+isinθ
と表せ、このとき
1z=cosθ−isinθ
に注意すると、
ω=(1+√22)z+(1−√22)1z=(1+√22)(cos+isinθ)+(1−√22)(cos−isinθ)=cosθ+√2isinθ
これを図示すると下図。
解説
条件が |z|=1 なので、
1=|z|2=z¯z から z=1¯z
か、
z=cosθ+isinθ
を持ち出します。z=cosθ+isinθ を持ち出した場合も、すぐに、
1z=cosθ−isinθ
であることはひらめきたいです。一度は自分で計算してみてください。もしくは(1)から
1z=¯z=cosθ−isinθ
と理解してもよいです。
この辺りはこの記事↓で述べています。(直接該当箇所に移動はこちら)
まとめ
25年度の大学入試問題から複素数平面の基本問題を抽出してきました。東京大学と早稲田大学の問題には続きがありますが、まずは(1)の基本問題を楽に解けることがその後の余裕にもつながりますので、この辺りはパッと解けるように練習していきましょう。
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