複素数とは、実数では表しきれない数の世界を広げる魔法のような存在です。数直線上ではなく、複素数平面上で考えることで、その本質が驚くほど明快になります。本記事では、複素数の加減乗除が「座標変換」として解釈できることを通じて、直感的な理解を目指します。
複素数と複素数平面
複素数とは?
複素数は、
z=a+bi
a,b は実数、i は虚数単位という形で表されます。これは、平面上の座標 (a,b) としても捉えられるため、図形的な視点がとても有効になります。
複素数平面
例えば、複素数 z1=1+2i は複素数平面上では (1,2) に、z2=3−4i は (3,−4) にプロットされます。

座標変換としての加減乗除
加法と減法:ベクトルの和と差
複素数の加法・減法はベクトルの加法・減法として理解できます。
- 加法: 例として、z1=1+2i と z2=3–4i を足すと、
z1+z2=(1+3)+(2−4)i=4–2i
これは、複素数平面上で両者のベクトルを加えたこと意味します。 - 減法: 同様に、z1–z2 はベクトルの差となります。
z1–z2=(1−3)+(2+4)i=−2+6i
乗法:順回転と拡大
簡単な例:i を掛けると90度回転
複素数の掛け算は「回転+拡大縮小」という性質を持ちます。
- 乗法の基本: 例えば i を掛けると、
(1+i)×i=i+i2=i–1=−1+i
これは、90度反時計回りに回転させる操作です。
ステップ・バイ・ステップで確認します。
掛けられる数は z1=1+i です。複素平面上では A(1,1) です。

これに z2=i を掛けることを考えます。z2 は x 軸に対して 90∘ の位置にあります。複素平面上では B(0,1) です。

i を掛けることで 90∘ 回転であることを理解したいわけですが、ここでは先に実際に計算にて打点してみます。
(1+i)×i=i+i2=i–1=−1+i
なので、A′(−1,1) です。

最後に、本当に回転になっているのか、確かめます。A を 90′ 回転させると、確かに A′ になりました。

一般的な例
今度は、z1=√3+i に、z2=1+√3i を掛ける演算を考えます。
(√3+i)(1+√3i)=√3+3i+i−√3=4i
となります。これを複素平面で表現すると↓のようになります。
ステップ・バイ・ステップで確認します。
掛けられる数は z1=√3+i です。複素平面上では A(√3,1) です。

これに z2=1+√3i を掛けることを考えます。z2 は x 軸に対して 60∘ の位置にあります。複素平面上では B(1,√3) です。

z2 を掛けることで 60∘ 回転であることを理解したいわけですが、ここでは先に実際に計算にて打点してみます。
(√3+i)×(1+√3i)=√3+3i+i−√3=4i
なので、A′(0,4) です。

最後に、本当に回転になっているのか、確かめます。A を 60′ 回転させると、A′ の角度にはなりましたが、長さが異なります。

長さを 2 倍すれば、A′ に一致します。この 2 倍という数は、掛ける数 z2 の大きさ(すなわち、OB の長さ)です。

このように複素数の乗算は、複素平面上では回転と拡大を意味します。
これを応用すれば三角関数の加法定理も余裕で導ける
三角関数の加法定理は次のような公式です。
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ
これも、複素数の演算を使えばたちどころに証明できてしまいます。この証明の記事は独立させました。
除法:逆回転と縮小
除法は、乗法の逆操作です。乗法のときの例を逆にして考えてみましょう。乗法では、z1=√3+i, z2=1+√3i のとき、z3=z1×z2=4i でした。ここから、z3z2 を考えてみます。
z3z2=4i1+√3i=4i(1−√3i)(1+√3i)(1−√3i)=4i+4√31+3=i+√3=√3+i
となり、当たり前ですが、z1 になりました。つまり、複素平面上では、z3 が z2 の角度である 60∘ だけ逆回転し、さらに長さも z2 の長さである 2 だけ縮小(除算)されたのです。
まとめ
複素数の演算は、単なる数の操作ではなく、複素数平面上の座標変換として理解できます。
✅ 加減 → ベクトルの和と差
✅ 乗算 → 順回転+拡大
✅ 除算 → 逆回転+縮小
この視点を持つことで、数学の世界がより直感的に感じられるはずです。ぜひ、実際に複素数をプロットして動かしてみてください!
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