等加速度運動には、次の3つの基本公式があります。
\begin{eqnarray}
&&v=v_0+a t\tag{1}\label{p1125eq1}\\
&&s=v_0 t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\tag{2}\label{p1125eq2}\\
&&v^2-v_0^2=2as\tag{3}\label{p1125eq3}
\end{eqnarray}
高校物理では必ず登場する重要な式ですが、
「覚えたつもりなのに、なぜこうなるのか説明できない…」
という人も多いはずです。
この記事では、この3公式を
- ① 新幹線の例を用いてグラフで直感的に理解
- ② グラフの直感を微分積分の言葉に置き換え
- ③ 微分積分を用いて本格理解
という3つの段階を経て、暗記ではなく“理解”として身につけることを目指します。
特に3つ目の公式
$$v^2 – v_0^2 = 2as$$
は、両辺に $\displaystyle\frac{1}{2}m$ をかけると
力学的エネルギー保存の法則
とまったく同じ形になります。
物理の世界が一本につながる瞬間を、ぜひ味わってください。
また、等加速度運動の代表的な応用例は放物運動です。
無味乾燥な例ではつまらないので、趣味のテニスに適用して考えてみた記事もあります。
👉 テニスで考える放物運動
① 新幹線の例を用いてグラフで直感的に理解
まずはグラフを使って、等加速度運動の本質を直感的に理解します。題材として新幹線を考えてみましょう。
新幹線の加速度はおよそ $2.0 \mathrm{[km/h/s]}(\doteqdot 0.5 \mathrm{[m/s²]})$ とされています(参考文献:700系の加速度向上について)。ここでは簡単のため、新幹線は $0.5 \mathrm{[m/s²]}$ の一定加速度で加速しているとします。
加速度 $a$ から速度 $v$ を導く
等加速度運動とは、加速度 $a$ が一定 の運動です。
ここでは、より直感的に理解するために 新幹線に乗っているイメージ を使います。
新幹線は毎秒 $0.5\mathrm{m/s}$ ずつ速度を増していきます。
あなたは今、ちょうど駅を出発したばかりの新幹線に乗っています。
- 1 秒後には: $v=0.5 \mathrm{[m/s]}$
- 2 秒後には :$v=1.0 \mathrm{[m/s]}$
- 3 秒後には :$v=1.5 \mathrm{[m/s]}$
というように、毎秒同じだけ速度が増えていくのが「等加速度」です。
このイメージがつかめれば、
$t$ 秒後の速度 $v=0.5t$ になることは自然に理解できます。
つまり、$v-t$ グラフは傾き $a=0.5$(一定)の直線になります。

一般の加速度 $a$ で書けば、初速度を $v_0$ と置いて(今回の例ではこれは $0$ でした)、
$$v=v_0+at\tag{1:再掲}$$
となります。
おまけ:新幹線は何秒後に最高速度に到達するか?
さて、最後に少しおまけですが、新幹線は何秒で最高速度 $270\mathrm{[km/h]}$ に到達するでしょうか。ここでは簡単のため、あくまでも一定の加速度 $0.5\mathrm{[m/s^2]}$ で加速しているとして考えます。$270\mathrm{[km/h]}$ は $75\mathrm{[m/s]}$ なので($=270\div 3.6$)、$150\mathrm{[s]}$ で最高速度に到達します。グラフで表すと下記です。

公式を用いて計算で解くと、
加速度 $a=0.5\mathrm{[m/s^2]}$ なので速度 $v=75\mathrm{[m/s]}$ となるには、
$$75=0.5t$$
を解いて
$$t=150$$
もちろん実際には最高速度に近づくにつれて加速度は小さくなってくるので、それを考慮すれば $150$ 秒 よりは長くなるでしょう。実際、700系の加速度向上についてにはその2ページ目をみると、$300$ 秒弱で到達することが書かれています。
速度 $v$ から変位 $s$ を導く
変位とは「速度 × 時間」です。
速度が一定なら長方形の面積、
速度が変化するなら $v–t$ グラフで囲まれる面積になります。
等加速度運動では $v–t$ グラフは台形になります。
その面積を求めれば変位が求まります。
$$s=v_0 t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\tag{2:再掲}$$

おまけ:新幹線は最高速度に到達したときどこまで進んでいるか?
新幹線の例に戻りましょう。
新幹線は $0.5\mathrm{[m/s^2]}$ で加速しており、$0$ 秒から $150$ 秒までの変位は下図の面積で求められます。
その面積は、
$$s=\displaystyle\frac{1}{2}\times150\times 75 = 5625\mathrm{[m]}$$

時刻 $t$ を消去して3つ目の公式を導く
ここまでくれば、あとは次の連立から $t$ を消去するだけです。
\begin{eqnarray}
\left\{ \begin{array}{l}
v=v_0+at\\
s=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$t$ を消去する式変形を進めると、
$$v^2-v_0^2=2as\tag{3:再掲}$$
を得ます。
実はエネルギー保存の法則と同じ式
この式を見てピンときた人は鋭いです。
$$v^2-v_0^2=2as\tag{3:再掲}$$
の両辺に $\displaystyle\frac{1}{2} m$ をかけると、
$$\frac{1}{2} mv^2 – \frac{1}{2} mv_0^2 = mas$$
となり、力学的エネルギー保存の法則と同じ形になります。
(重力による力学的エネルギー保存の法則の場合は、加速度 $a$ を $g$、距離 $s$ を $h$ で記載します。)
つまり、力学的エネルギー保存の法則は単に、
加速度 $a$ で等加速度運動をしているに過ぎない
ということを言っています。
② グラフの直感を微分積分の言葉に置き換え
ここでは、①でつかんだ 「グラフの形」 をそのまま使いながら、
微分積分を用いて等加速度運動の公式を導きます。
ポイントは次の2つです。
- 微分=グラフの傾き
- 積分=グラフの面積
この対応を意識すると、式の意味が一気にクリアになります。
加速度 $a$ から速度 $v$ を導く
微分の見方
加速度は
$$a=\frac{dv}{dt}$$
です。
積分の見方
式変形をして、
$$dv=a\,dt$$
です。
両者の関係
この両者のイメージは下記です。
左図:$v-t$ グラフで見ている。$a$ は傾き。
右図:$a-t$ グラフで見ている。$v$ は面積。(正確には速度変化 $v-v_0$)

左図のイメージで考える(微分の見方)
等加速度運動の場合、
$v-t$ グラフの傾き $a$ が一定
ということなので、$v$ は $t$ に関して直線となり、初速度を $v_0$ と置いて、
$$v=v_0+at\tag{1:再掲}$$
です。

右図のイメージで考える(積分)
$a-t$ グラフの面積が速度変化 $v-v_0$
であり、等加速度運動の場合その面積は長方形となるので、
$$v-v_0=at\tag{1:再掲}$$
です。

速度 $v$ から変位 $s$ を導く
速度は
$$v=\frac{ds}{dt}$$
です。これは、
$$ds=v\,dt$$
です。
積分のイメージで考えれば、
$v-t$ グラフの面積が変位 $s$
です。
等加速度運動の場合 $v-t$ グラフは一次関数
$$v=v_0+at\tag{1:再掲}$$
なので、その面積は台形の面積です。

$$s=v_0 t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\tag{2:再掲}$$
③ 微分積分を用いて本格理解
最後に、部分積分や変数変換を使って、より一般的な形で3公式を導きます。ここでは数学的な厳密さを重視します。
加速度 $a$ から速度 $v$ を導出
加速度の定義式
加速度は
$$a=\frac{dv}{dt}\tag{1-1}\label{p1125eq1-1}$$
両辺積分
両辺を $t$ で $t=0$ から $t=t$ まで積分すると、
$$\int_0^t a\, dt=\int_0^t\frac{dv}{dt}dt\tag{1-2}\label{p1125eq1-2}$$
$a$ は $t$ によらず一定なので積分の外に出せるから、
\begin{eqnarray}
\mathrm{左辺}&=&a\displaystyle\int_0^t\, dt\\
&=&a[t]_0^t\\
&=&at
\end{eqnarray}
一方右辺は、$t=0$ のときの速度を $v=v_0$、$t=t$ のときの速度を $v=v_t$ と置くと、
\begin{eqnarray}
\mathrm{右辺}&=&\displaystyle\int_{t=0}^{t=t}\displaystyle\frac{dv}{dt}dt\\
&=& \displaystyle\int_{v=v_0}^{v=v_t}\, dv\\
&=& [v]_{v_0}^{v_t}\\
&=& v_t-v_0
\end{eqnarray}
よって、
$$v_t=v_0+at\tag{1-3}\label{p1125eq1-3}$$
記号表現の意味
ここで少し気持ち悪い表現が出てきます。たとえば $t=t$ や $v=v_0$ のような書き方です。これは、
左側の $t$ や $v$ は「変数としての記号」
右側の $t$ や $v_0$ は「そのときの具体的な値」
を表しているだけです。つまり、
$t=t$ は「時刻が $t$ のとき」
$v=v_0$ は「速度が $v_0$ のとき」
という意味です。
もう一つ気になるのは次の式変形でしょう。
$$\int_{t=0}^{t=t}\frac{dv}{dt}\,dt = \int_{v=v_0}^{v=v_t}dv$$
右辺は、形式的には
$$\frac{dv}{\cancel{dt}}\cancel{dt}$$
のように $dt$ が“消えた”形になっており、積分の変数が $t$ から $v$ に切り替わっています。
これはまさに 積分の変数変換(置換積分) をしています。
置換積分については、こちらで詳しく説明しています。
速度 $v$ から変位 $s$ を導出
速度の定義式
速度は
$$v=\frac{ds}{dt}\tag{2-1}\label{p1125eq2-1}$$
両辺積分
両辺を $t$ で $t=0$ から $t=t$ まで積分すると、
$$\int_0^t v\, dt=\int_0^t\frac{ds}{dt}dt\tag{2-2}\label{p1125eq2-2}$$
$v$ は式\eqref{p1125eq1-3}にて
$$v=v_0+at$$
と求められているからこれを左辺に代入して計算すると
\begin{eqnarray}
\mathrm{左辺}&=&\displaystyle\int_0^t(v_0+at)\, dt\\
&=&\left[v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\right]_0^t\\
&=&v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2
\end{eqnarray}
一方右辺は、$t=0$ のときの位置を $s=0$、 $t=t$ のときの位置を $s=s$ と置くと、
\begin{eqnarray}
\mathrm{右辺}&=&\displaystyle\int_{t=0}^{t=t}\displaystyle\frac{ds}{dt}dt\\
&=& \displaystyle\int_{s=0}^{s=s}\, ds=[s]_0^s\\
&=&s
\end{eqnarray}
よって、
$$s=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\tag{2-3}\label{p1125eq2-3}$$
まとめ
等加速度運動の3公式を、
- グラフの傾き・面積
- 微分積分の関係
- エネルギー保存とのつながり
という3つの視点から導きました。
この3つが頭の中でつながれば、等加速度運動は「暗記する公式」ではなく「理解して使う道具」になります。その結果として次に示すような関係がイメージできるようになれば目的達成です。

テニスが好きな方は、等加速度運動の公式を使った例題としてこちらもどうぞ。






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